青梅図書館の移転をめぐって、いつの間にか定着した「貸さない図書館」という言葉。実はこれ、青梅市が付けた名前ではありません。私たちマスコミが使い始めた呼び名です。
そんな中、2026年10月3日、JR八王子駅南口の八王子医療刑務所跡地(八王子市子安町3)に複合施設「桑都の杜(そうとのもり)」がオープン。その中に、青梅とよく似た考え方の図書館「いこいライブラリ」ができました。
「貸さない図書館」って、実際はどんな感じなんだろう。
「これは見てみたい!」と思い、オープン初日に行ってきました。
新青梅図書館と共通している部分とは

こちらが複合施設「桑都の杜」です。かなりスタイリッシュな建物ですよね。

中へ入ってみると、緩やかな曲線を描く木製の書架が並び、青梅が計画している図書館との共通点がいくつもありました。

館内の本は通常のようには貸し出さず、いつ訪れても本がある状態を保ちます。本をテーマごとに並べ、歩きながら思いがけない一冊と出会ってもらうという考え方です。
予約した本を受け取ることができ、受け取りロッカーがあるところも青梅と似ています。

また、手続きをすれば館内の本を1回3冊まで、目の前に広がる芝生の八王子中央公園へ持ち出すこともできます。
職員さんに貸し出しのことについて話を聞くと、やはり「この本、借りられないんですか?」と聞かれることも多いそうです。
やっぱり、そこは気になりますよね。
でも、実際に施設の中や周辺を歩いていると、青梅とは何かが違うなと感じました。
本だけが目的の場所ではない

「桑都の杜」には、目の前に芝生の公園が広がっています。子どもたちが遊べる場所もたくさんあり、1階では八王子の歴史を学ぶこともできます。

ライブラリでは会話をしながら本を読むことができ、飲食もOKです。よっぽどのニオイを発しない飲食だったら、基本的にOKとか。隣にはカフェもあるので、コーヒーを飲みながら過ごすこともできます。

桑都の杜は、災害時に約7,000人を収容できる広域避難場所としての役割も担います。防災倉庫やかまどとして使えるベンチを備え、太陽光発電や屋上緑化など環境にも配慮しています。

本を読んで、外で遊んで、ご飯を食べて、また本を読む。
親子で来ても一日過ごせそうですし、学校や家とは違う居場所を求めている人にとっても、こういう場所があるのはとてもいいなと思いました。
実際に歩いてみると、図書館に本を借りに行くというより、複合施設で思い思いに過ごす中に本があるという感じなんですよね。
私は、この空間がとてもいいなと思いました。
では、青梅はどうだろう

ここで改めて考えたのが、青梅のことです。
八王子は既存の市立図書館9館を残したまま、「いこいライブラリ」という新しい選択肢を加えました。公園や遊び、歴史、飲食など、さまざまな楽しみ方ができる複合施設の中に図書館がある。図書館はあくまでも施設の一部なんですね。

青梅は少し事情が違います。現在の青梅図書館そのものが移転し、その中で読書だけでなく、滞在や交流などいろいろなことができる施設を目指しています。
青梅図書館で書架を眺め、読みたい本を見つけて借りて帰る。そんな使い方をしてきた人も多いと思います。しかし移転後は、館内に並ぶ本を原則貸し出さず、予約した本などを受け取る形になります。
新しい選択肢が一つ増えるのではなく、今ある図書館の使い方そのものが変わるということです。
本を借りる場所として青梅図書館を利用してきた人たちがいる中で、同じように本を貸し出さない仕組みを取り入れても、その受け止め方は八王子とは違ってくるのではないでしょうか。
二つの図書館は、目指すところにはよく似た部分があります。でも実際に八王子を訪れてみると、その図書館がどんな施設の中にあり、利用する人たちから何を求められているのかは、同じではないように感じました。
「貸す、貸さない」だけで考えない

今回、実際に八王子まで行ってみて、聞くだけでは分からなかった魅力も、その場所で過ごしてみると見えてくるものがありました。
親子で遊びに来る人もいれば、芝生にシートを敷いてくつろぐ人もいます。本を読むことだけを目的に訪れるのではなく、それぞれの過ごし方の中に図書館がある。そんな場所なんだなと感じました。
八王子はまさに、いろいろな機能を詰め込んだ幕の内弁当のような複合施設です。その中の一つとして「いこいライブラリ」があります。
そう考えると、青梅についても単純に「貸すべき」「貸さなくてもいい」という二択だけで考えるのは違うような気がします。
青梅の図書館に、市民は何を求めているのでしょうか。
本を借りることはもちろん、ゆっくり本を読むことも、人と過ごすことも、子どもたちの居場所になることも大切です。
新しい図書館になったとき、何ができるようになるのか。そして、今までできていたことの何が変わるのか。その両方を見ながら考えていく必要があると思います。
八王子の「いこいライブラリ」を歩いてみて、これからの青梅にどんな図書館が必要なのか、改めて考えるきっかけになりました。
